新郎は誓いのキスをした。
永遠のお別れを誓うキスだ。
この物語はこれで終わる(終わらせる)わけだが、
新郎がこの式場から逃げなければこの物語を終わらせることができない。
こんなに幸せなのに、理不尽じゃないかと新郎は思うかもしれない。
その通りだ。物語の世界はもれなく理不尽なのだ。
キスをした後、新郎は走った(走らされた)。
何かから逃げているのか、あるいは何かを追っているのか、新郎にはわからなかった。
式場から飛び出し、ただひたすらに走った。
走って走って走り疲れた新郎は自らの意志で足を止める。
目の前の横断歩道を渡り切れば、また理不尽に走らされるのだろう。
新郎は両手をポケットにつっこみ、一歩一歩これが自らの意志であることを確認しながら噛みしめるように歩いた。
式場の支配人である男は、ようやく新郎のもとに辿り着き、声をかけようと彼の後ろを歩いた。
栄光ある怪盗一族の四世である男は、ようやく式場の支配人である男のもとに辿り着き、悟られぬよう彼の後ろを歩いた。
死ぬきっかけを奪われた男は、ようやく栄光ある怪盗一族の四世である男のもとに辿り着き、殴り倒してやろうと彼の後ろを歩いた。
はい、ここまで。僕が語ることができるのはここまでだ。
彼らがこれからどのような運命を辿るのか。
それはわからない。
そして、横断歩道に並んだこの4人の光景を、誰がどのようにしてどんな目的で写真に収め、1969年9月26日にリリースされたビートルズのアルバムジャケットを飾ることになったのか。
2011年4月9日現在の僕にも全くわからないのである。
(完)
最初から男の人しか描かれてなかったんですね。そんなーー!
返信削除うむ。
返信削除