最期の言葉を聞いてやるのも殺し屋の仕事のひとつだ。
「言い残すことはあるか」
銃口を相手に向け、落ち着いた声でそう問うた瞬間、
その人物に対しての興味は、風の前の塵のようにふっと消え去る。
興味があるのは、その人物の口からこぼれ落ちる最期の言葉だ。
その言葉を頭の中で反芻し、何も言わずに人差し指にほんの少し力を入れるだけ。
バーン、射殺。はい、任務完了。
そして先程まで生命だったものの前で、俺は胸ポケットから手帳を取り出し、
忘れぬうちにメモしておく。一言一句逃さぬように。
手帳にはたくさんの最期の言葉たちが書かれている。
交渉、祈り、絶望、錯乱、憤慨、後悔。
主人を失った言葉たちがこの手帳に眠っているのだ。
パラパラと1ページずつめくっていたが、諦めて俺は手帳を閉じた。
やはりなかった。模範解答なんてない。
「言い残すことはあるか」
自分が問われるとは思ってもみなかったな。
今は拳銃も質問も俺に向けられている。
ひざまずき過ぎて膝が痛い。
眉間に触れる銃口がとても冷たい。
目を閉じて、俺は、俺自身の最期の言葉を探した。
アメリカかどこかで実際に調査された死刑囚の最後の言葉、
返信削除いちばん使われてた単語は「love」だそうです。
ちょっとしたトリビアでした。
All You Need is Love.
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