2011/05/29

その名前に、

宇宙太という名前を背負った人は、

どんな人生をおくってきたのだろう。

どんな願いをこめて親はその名前をつけたのだろう。

小学校の授業、名前の意味を発表する作文で、

彼はどんな気持ちで原稿用紙に向き合ったんだろう。

友達からなんて言われていたんだろう。

あだ名はなんだったんだろう。

自己紹介する時はどんな気持ちだったんだろう。

初対面の女性にどんな気持ちで自分の名前を言ったんだろう。

自分の名前を、自分の名前に対する思いを。

ポジティブに受け止められていたのだろうか。

ネガティブに捉えていたのだろうか。

ネタにしてしまうほどの器用さを持ちあわせていたのだろうか。

名前の多様化が進む、もっともっと前。

40年も前から、その名前を背負ってきた人がいる。

そのニュースを聞いた時。

その名前に、せつなさを感じた。

2011/05/27

さいごの音楽

エンドロールに似合う音楽にはどんなものがあるだろう。

長いようで短い、あるいは短いようで長い人生の幕を閉じるとき、

ターンテーブルに乗せるとっておきのレコード。

あなたはどんな音楽を選ぶのだろうか。

ビートルズの「ABBEY ROAD」なんかいいんじゃないかなと思う。

ホワイトアルバムも悪くない。

優柔不断な僕は、

あれもいいなこれもいいなと迷っているうちに事切れて、

たっぷりとお経を聴かされることになるのがオチだろうな。

2011/05/26

ホッチキス

ホッチキスの針を入れ替えて

また使えるようにガチャリとやると

最初のひと針が何も言わずにポトリと放り出される

後の針たちがその役目を気持ちよく果たすために

そのひと針は犠牲になるのだ

ホッチキスの針の呼び方は

しん、たま、はり、ステープル(これは可愛らしい)

などがあり特には決まってはいない

哀れな最初のひと針については

特別な名前があってもいいとは思うのだが

考えてみても全く思いつかない

必要がないから名前がないのかもしれないが

「吾輩はホッチキスの最初のひと針である

名前はまだない 名前をくれ 供養してくれ」

そう聞こえるような気がして

僕は針を入れ替えるたびに

申し訳ない気持ちになったりもするのだ

哀れな最初のひと針たちが群れをなし

夜道を歩く僕を襲ったとしても

甘んじて受け入れるのではなかろうか

文句ひとつ言えないのではなかろうか

そう思いながら

今日も針の入れ替えに手こずるのである

2011/05/19

答えのない解答集

最期の言葉を聞いてやるのも殺し屋の仕事のひとつだ。

「言い残すことはあるか」

銃口を相手に向け、落ち着いた声でそう問うた瞬間、

その人物に対しての興味は、風の前の塵のようにふっと消え去る。

興味があるのは、その人物の口からこぼれ落ちる最期の言葉だ。

その言葉を頭の中で反芻し、何も言わずに人差し指にほんの少し力を入れるだけ。

バーン、射殺。はい、任務完了。

そして先程まで生命だったものの前で、俺は胸ポケットから手帳を取り出し、

忘れぬうちにメモしておく。一言一句逃さぬように。

手帳にはたくさんの最期の言葉たちが書かれている。

交渉、祈り、絶望、錯乱、憤慨、後悔。

主人を失った言葉たちがこの手帳に眠っているのだ。

パラパラと1ページずつめくっていたが、諦めて俺は手帳を閉じた。

やはりなかった。模範解答なんてない。

「言い残すことはあるか」

自分が問われるとは思ってもみなかったな。

今は拳銃も質問も俺に向けられている。

ひざまずき過ぎて膝が痛い。

眉間に触れる銃口がとても冷たい。

目を閉じて、俺は、俺自身の最期の言葉を探した。

ささやかな

いいねと言っているのを聞くだけで明日もがんばれる気がします。

2011/05/15

本命

掃除中に出てきたメモ「大事にできるものがあるときは大事にしとけよ」

2011/05/14

おもいつき短歌

鍵閉めてチェーンを掛けてふと気付く ドレッシングは別売りだった